韓国ドラマ『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』は、高句麗の王女と純朴な青年の愛を描いた時代劇です。放送中に主演俳優が交代したことでも話題を集め、モデルの王女が実在したのか気になる人も多いでしょう。今回は王女ピョンガンのあらすじやキャスト交代の理由、史実との関係を紹介します。

王女ピョンガンのあらすじと作品概要

王女ピョンガンのあらすじを紹介する前に、まずは作品の基本情報から押さえておきましょう。『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』は、2021年に韓国KBS2で放送された全20話の時代劇です。韓国で広く知られる説話「ピョンガン王女とバカのオン・ダル」をモチーフにした作品です。脚本は『99億の女』のハン・ジフン、演出は『師任堂(サイムダン)、色の日記』のユン・サンホが担当しました。韓国では月火ドラマの視聴率1位を守り、放送中に世界190か国へ販売されたと報じられています。

記憶を失った王女と青年の出会い

物語の始まりは西暦561年、第25代の平原(ピョンウォン)王が治める高句麗です。王の重臣コ・ウォンピョの策略でヨン王妃が命を落とし、幼いピョンガン王女も行方不明となりました。8年後、記憶を失った王女は刺客として育てられ、「カジン」という名で生きています。一方のオン・ダルは、父の遺志に従って武術と距離を置き、山奥で薬草を採って暮らす心優しい青年です。運命に導かれるように出会った2人は、やがて互いに惹かれ合っていきます。

主要キャストと役どころ

ピョンガン役を務めたのは、『仮面の王 イ・ソン』などで知られるキム・ソヒョンです。母のヨン王妃、記憶を失った刺客カジン、王女ピョンガンの三役を演じ分け、初のアクションにも挑みました。主な出演者と役柄は以下のとおりです。

  • キム・ソヒョン:ピョンガン/ヨム・ガジン役
  • ナ・イヌ:オン・ダル役
  • イ・ジフン:コ・ゴン役
  • チェ・ユファ:ヘ・モヨン役
  • キム・ボムレ:平原王役

王座を狙う有力貴族と王家の権力争いも描かれ、恋愛ドラマとしてだけでなく政治劇としても見応えのある作品です。

最終回は伝説どおりの結末

結末のネタバレを含むため、未視聴の人はご注意ください。北周との戦いで功を立てた2人は、王女と駙馬(ふば)として王宮に迎えられます。しかし、王家の力を抑えようとする貴族たちとの対立は、さらに激しさを増すばかりです。最終回では、オン・ダルが阿旦城(アダンソン)の戦いで新羅兵の矢を受けて戦死します。悲しい別れを描きながらも、韓国メディアでは物語がハッピーエンドで幕を閉じたと評価されました。

王女ピョンガンのキャスト交代の理由

本作は、放送の途中で主人公オン・ダル役の俳優が交代したことでも大きな注目を集めました。当初オン・ダルを演じていたのは、俳優のジスでした。2021年3月初め、中学時代の同級生を名乗る人物が、ジスから学校暴力を受けたとネット上で告発したのが発端です。ジスは自身のInstagramで過去の加害を認めて謝罪し、芸能活動を中断しました。制作会社のビクトリーコンテンツは同年3月5日に公式コメントを発表し、ジスの降板を決めたと明らかにしています。

ナ・イヌの代役起用と撮り直し

降板が決まった時点で、ドラマは全20話のうち18話まで撮影済みで、放送も第6話まで進んでいる状況でした。制作陣はナ・イヌを代役に起用し、第7話から撮り直したうえで放送を続けています。さらに視聴者が作品に入り込みやすいよう、放送済みの第1〜6話もナ・イヌの出演で再撮影しました。撮り直しでは共演者の多くが出演料を受け取らずに協力したそうで、チームワークの良さも話題です。

参考サイト:ムビコレコレクション

降板をめぐる損害賠償訴訟の結末

撮り直しで多額の追加費用が生じたため、制作会社がジスの当時の所属事務所キーイーストを提訴したのは2021年4月のことです。約30億ウォンの請求に対し、1審は約14億2,000万ウォン、2審は約8億8,000万ウォンの支払いを命じています。2026年6月にはキーイースト側が上告を取り下げ、2審判決が確定しました。降板から5年余りを経て、法廷での争いにもようやく決着がついた形です。

王女ピョンガンは実在した?

ピョンガン王女は、漢字で「平岡公主」と書く高句麗の王女です。第25代・平原王の長女とされ、高麗時代に編さんされた歴史書『三国史記』の「温達伝」に登場します。記録によれば、幼い王女はよく泣いたため、父王から冗談まじりに温達へ嫁がせると言われていたそうです。成長した王女は本当に温達との結婚を望んで宮殿を追われ、自ら温達の家を訪ねて夫婦の契りを結んだと伝えられています。

王女の実在性と生涯

王女は目の不自由な姑を大切に世話しながら、温達を優れた武将へと育て上げたとされます。生年と没年はわかっておらず、王女の人物像は主に「温達伝」を通して伝わっています。韓国の百科事典でも、王女の行動は当時の社会では非常に型破りなものだったと解説されているほどです。史書に名を残す人物である一方、物語には民間で語り継がれた説話の要素も含まれていると考えられています。

夫オン・ダル(温達)も史書に登場

夫の温達は、平原王と嬰陽王の時代に活躍した高句麗の将軍です。北周との戦いで手柄を立て、「大兄」という官位を授かったと記されています。嬰陽王の即位後は、南漢江流域の奪還を自ら願い出て新羅との戦いに出陣しました。しかし、阿旦城の下で新羅軍の矢を受けて命を落としたというのが、史書の伝える最期です。阿旦城の場所には諸説あり、韓国・丹陽の温達山城とみる説もあるそうです。

ドラマと史実の違い

ドラマは『三国史記』の説話を下敷きにしながらも、大胆な脚色を加えています。王女が記憶を失って刺客として育つ設定や、王妃暗殺をめぐる陰謀は、ドラマ独自の創作です。一方で、温達が北周との戦いで功を挙げる展開や、阿旦城で戦死する結末は史書の内容を踏まえています。とくに、王女が温達を武将へと導く関係性は、原典の説話から受け継がれた部分といえます。史実との違いを意識しながら見ると、作品をより深く楽しめるでしょう。

まとめ

王女ピョンガンのあらすじは、記憶を失った王女と青年オン・ダルの純愛を軸に展開する物語です。放送中にはジスの学校暴力問題で主演が交代し、放送済みの回まで撮り直す異例の事態も起きました。モデルの平岡公主は『三国史記』に記録が残る人物なので、史実と照らし合わせて見るのもおすすめです。